「決算期が終われば、相場は本当に下がるのか?」
3月の-8.5%下落を受け、多くの売却検討者がこの問いを抱えていました。4月のオークションを終え、表面的な数字は「下げ止まり」を示しています。しかし、その裏側ではもっと大きな構造変化が起きていました。
当メディア『Used Car Market Log』では、業者間オークション「USS」の取引データと最新の中古車輸出統計を独自に分析。2026年5月現在の結論は二段構えです。短期的には4月後半から成約単価が反発し、月次は前月比-0.5%でほぼ横ばい着地。しかし、3月以降のホルムズ海峡封鎖により、日本最大の輸出先だったUAE経由の物流ハブ機能が事実上停止。日本国内に行き場を失った輸出予定車両が滞留し始めており、長期化すれば中古車相場全体への下押し圧力になりかねません。
1. 業者間オークション相場:4月後半に「表面的な下げ止まり」
まずは数字を見ていきましょう。国内最大の中古車オークション「USS」の2026年4月実績は、3月の急落の後だけに「下げ止まり」の体裁を整えています。
2026年4月実績(対3月比):成約単価はほぼ横ばいで着地
3月決算期に+9.7%まで増えていた出品台数は、4月に入り-6.9%へ反転。成約台数も-11.1%と大きく落ち込みました。一方で注目すべきは、成約単価が-0.5%(164.8万円→163.9万円)のほぼ横ばいで着地したこと。3月の-8.5%下落とは対照的に、月次平均では「価格は下げ止まった」と判断できる水準です。
| 項目 | 2026年3月 | 2026年4月 | 前月比 |
|---|---|---|---|
| 平均出品台数 | 21,080台 | 19,632台 | -6.9% |
| 平均成約台数 | 14,372台 | 12,774台 | -11.1% |
| 成約率 | 68.2% | 65.0% | -3.2pt |
| 成約単価 | 164.8万円 | 163.9万円 | -0.5% |
※USS東京・横浜会場ほか週次データを基に当編集部で月次平均を算出。3月数値は3/26開催分まで含めた確定値です。
週次推移が示す「N字反発」と前年同月比の高水準
月次平均だけ見ると「ほぼ横ばい」ですが、週次の動きを追うと、より大きな物語が浮かび上がります。4月前半は3月の調整局面の延長で軟化していたものの、4/16以降に成約単価が一気に約13万円反発しました。
| 開催日 | 出品台数 | 成約台数 | 成約率 | 成約単価 |
|---|---|---|---|---|
| 3/26 | 22,287台 | 14,842台 | 66.6% | 157.9万円 |
| 4/2 | 17,917台 | 11,543台 | 64.4% | 158.8万円 |
| 4/9 | 20,055台 | 13,185台 | 65.7% | 157.7万円 |
| 4/16 | 20,275台 | 13,268台 | 65.4% | 170.1万円 ↑ |
| 4/23 | 20,281台 | 13,098台 | 64.6% | 169.1万円 |
4/9から4/16にかけて、出品台数はほぼ横ばい(20,055→20,275台)にもかかわらず、成約単価だけが157.7万円から170.1万円へ約12万円ジャンプ。成約率も大きく動いていないことから、「特定の高額帯車種に買いが集中した」と読むのが自然です。
また前年同月比で見ると、2026年4月の成約単価163.9万円は、2025年4月(150.5万円)に対して+8.9%高い水準。成約台数も前年比+9.7%です。中長期トレンドとしての「日本の中古車市場の活況」自体は引き続き継続しています。
ただし、この「下げ止まり+反発+前年比高水準」という安心感のある数字には、大きな注釈が付きます。3月以降に起きている中東情勢の急変が、今後の相場の方向性を大きく左右する状況です。次章で詳しく見ていきます。
2. 【最重要】ホルムズ海峡封鎖が中古車輸出に与える衝撃
2026年5月の中古車市場を語るうえで、絶対に避けて通れないのがホルムズ海峡封鎖の影響です。中古車買取の文脈ではあまり語られませんが、この一件は今後数ヶ月の相場を決める最大の不確実要因と言って過言ではありません。
経緯:2026年3月以降、ペルシャ湾の物流が事実上停止
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2026年2月28日 | 米国・イスラエルがイランに大規模軍事作戦を実施、中東情勢が緊迫 |
| 3月1日〜2日 | ホルムズ海峡が事実上の封鎖状態に。イランが正式に封鎖を発表 |
| 3月7日 | 日本経済新聞、UAE経由の中古車輸出の物流ハブ機能停止を報道 |
| 3月後半〜 | UAE向け受注を停止する日本の輸出事業者が発生。輸出待ち車両の国内滞留が表面化 |
| 4月28日時点 | 通航は戦前比約95%減の水準が継続。停戦は延長されているが、商業的に使える航路には程遠い状態 |
※日本経済新聞、ジェトロ地域・分析レポート、時事通信「ホルムズ海峡貿易トラッカー」等の公開情報を基に当編集部で時系列を整理
なぜ中古車相場に直結するのか:UAEは「世界最大の再輸出ハブ」
UAE(ドバイ)は単なる輸出先ではなく、「日本→UAE→アフリカ・GCC・南アジアへの再輸出」という世界最大級の中古車流通ハブです。2025年の貿易統計では、UAEは年間22万台超で日本の中古車輸出先の国別1位を占めていました。
このハブ機能が停止した影響は深刻です。なぜなら、紅海危機の時のように喜望峰経由で迂回するという選択肢が、ホルムズ海峡には存在しないからです。ペルシャ湾内の港湾に到達するには、ホルムズ海峡を通るしかありません。
結果として何が起きているか。本来UAE向けに出荷される予定だった車両が、日本国内のヤード・港湾エリアに滞留し始めているのです。船積みのブッキングが不安定化し、保険料・運賃も上昇。一部の輸出事業者はUAE向けの新規受注を停止する判断に踏み切っています。
中古車相場への波及:「ジワジワ効いてくる」リスク
4月のオークションで-0.5%とほぼ横ばいだったということは、ホルムズ海峡封鎖の影響はまだ国内中古車相場には完全に織り込まれていないと見ています。理由は3つあります。
- 輸出業者の在庫処理が始まるのは時間差で:すでに買い付けてしまった在庫の処理が一巡するまで、買い付け価格を引き下げる動きが本格化しない
- ロシア・スリランカ等の代替輸出先が一定吸収:UAEで止まった分の一部を別ルートが吸収しているが、量的にUAEの代替には遠く及ばない
- 正常化期待が残っている間は値崩れしにくい:「いつかホルムズが再開する」という期待がある間は、買取業者も極端な弱気査定にはならない
逆に言えば、これらの条件が崩れた瞬間に相場が一気に下がるリスクがあります。具体的には、ホルムズ海峡の封鎖が長期化し、UAE向けの輸出再開が見通せなくなった場合、または滞留在庫が業界全体で吸収しきれない量に達した場合です。
3. 輸出統計が示す「需要先の組み替え」
こうした文脈を踏まえて、2026年3月確定の輸出ランキングを見ると、その意味が一段と立体的に見えてきます。
輸出台数 国別ランキング(2026年3月確定)
| 3月順位 | 国名 | 3月輸出台数 | 2月輸出台数 | 前月比 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 (↑3位) | ロシア | 19,424台 | 15,487台 | +25.4% |
| 2位 (↓1位) | タンザニア | 16,106台 | 18,711台 | -13.9% |
| 3位 (↑4位) | チリ | 9,395台 | 7,256台 | +29.5% |
| 4位 (↑5位) | ニュージーランド | 8,772台 | 7,039台 | +24.6% |
| 5位 (NEW) | スリランカ | 8,356台 | 5,382台 | +55.3% |
※財務省貿易統計を基に集計。前月(2月)2位だったアラブ首長国連邦(UAE)は、ホルムズ海峡封鎖の影響でTOP5圏外に脱落しています。
UAE圏外脱落=需要消失ではなく「物流途絶」
2月に18,023台で2位だったUAEが3月にTOP5から脱落しました。これはUAEの中古車需要そのものが消えたわけではありません。ペルシャ湾内の港湾に船が入れなくなったことによる、物流面での「強制的な数量ゼロ」化です。
この点は読み手にとって重要です。「UAE需要が落ちた」のではなく「日本→UAEのルートが物理的に塞がれた」状態。ホルムズ海峡が再開すれば、潜在需要は戻ってくる可能性が高い一方、再開のタイミングが見通せないため、現時点ではUAEルート分の22万台規模(年間)の輸出フローが宙に浮いている形です。
ロシア・スリランカ・チリ・NZ:UAE迂回先として一部吸収
3月に大きく伸びた4ヶ国の動きには、UAE経由で行き場を失った車両の代替輸出先という側面があります。
- ロシア(+25.4%):中央アジア経由ルートで安定稼働。1月-47.8%→2月+38.4%→3月+25.4%と急回復し、2ヶ月で台数がほぼ倍増(11,194台→19,424台)
- スリランカ(+55.3%):南アジア向けの代替経由地として機能している可能性。UAE経由でアフリカ・南アジアに再輸出されていた商流の一部を吸収
- チリ(+29.5%)/ニュージーランド(+24.6%):そもそもペルシャ湾を経由しない航路のため、ホルムズ封鎖の影響を受けない
ただし重要なのは、これらの増加分を合計しても、UAE向けの2月実績(18,023台)には全く届かないこと。ロシア(+3,937台)+スリランカ(+2,974台)+チリ(+2,139台)+NZ(+1,733台)の増加合計は約10,800台に対し、UAE向けは約18,000台規模で消失。差し引き7,000台超の「行き場のない車両」が国内に残る計算になります。これが滞留問題の規模感です。
4/16以降のオークション成約単価の急反発(+13万円)は、この代替輸出ルートが立ち上がった一時的な反映と見ることもできますが、構造的な需給のズレは依然として残っています。
4. 「今売るべき車」vs「待ってもいい車」最新版
ホルムズ海峡封鎖の影響を踏まえ、車種別の売却戦略はこれまで以上に明確に分かれます。輸出依存度が高い車種ほど、慎重なタイミング判断が必要です。
輸出強需要組:4月後半の反発が「最後の高値圏」になる可能性
大型SUV・ミニバン(UAE経由依存度が高い)
- ランドクルーザー250(新車超え相場継続)
- ランドクルーザー300(プレミア相場・ZXディーゼル1,291万円)
- ランクルプラド(10年落ちでも200万円超)
- アルファード(海外富裕層需要・40系550万円台)
- ヴェルファイア(40系は調整中・30系は底堅い)
- ハリアー(東南アジア・ロシア人気)
- ハイエース(世界的な商用車需要)
これらの車種は4月後半の単価反発の恩恵を受けています。一方で、ホルムズ封鎖が長期化すればUAE経由の高額帯売買が完全に止まり、業界全体の在庫圧力が買取査定額に反映されてくるステージに入る可能性が高いです。特に上段の「大型SUV・ミニバン」は、UAEからアフリカ・GCC・南アジアへの再輸出ルートに乗っていた車種が多く、滞留圧力をより直接的に受けやすい構造です。
ディーラー下取りに出すとそもそも数十万円〜100万円単位で損をするうえ、「もう少し様子を見てから」という判断が、今回ばかりは数十万円単位の値下がりリスクと隣り合わせです。査定だけでも今のうちに把握しておく価値があります。

国内需要依存組:影響は限定的だが、上昇材料も乏しい
- 軽自動車:タント、N-BOX、スペーシア(新車納期正常化で中古需要は弱含み)
- コンパクトカー:ヤリス、フィット、アクア、ノート(供給増による価格圧力)
- セダン:プリウス、カローラ(60系Zは前月比-8万円)
- 5ナンバーミニバン:セレナ、ノア、ヴォクシー、ステップワゴン(90系も調整局面)
これらの国内需要依存車種は、ホルムズ海峡の影響をほぼ受けません。ただし「待てば高くなる」材料も乏しい状態です。決算期の駆け込み需要は終わり、新車納期も正常化しているため、中古車価格の上昇要因が見当たりません。
特に車検が近い場合は、車検を通す前に売却した方が経済合理的です。

5. 5月の見通し:3つのシナリオ
ホルムズ海峡の動向を主軸に置くと、5月のオークション相場は3つのシナリオに分かれます。確度はあくまで現時点の判断であり、外交・軍事情勢の急変によって大きく動く可能性があります。
シナリオA(メイン):短期は横ばい、中期に下落圧力(確度45%)
ホルムズ海峡の通航は限定的に続き、UAE向けの大量再開には至らない展開。代替輸出先(ロシア・スリランカ・タンザニア等)が一定吸収するものの、滞留在庫がじわじわ業界の重しとなり、5月後半から6月にかけて買取査定額に下押し圧力が出始める。成約単価は5月前半は160〜165万円のレンジで推移、後半に155〜160万円帯へ調整入り。売却を検討中なら5月前半の動きが望ましいシナリオです。
シナリオB(下振れ):ホルムズ封鎖長期化+滞留拡大(確度35%)
停戦交渉が膠着し、ホルムズ海峡の商業的な再開見通しが完全に立たなくなる展開。輸出業者の在庫処理が一巡したタイミングで一斉に買取価格を引き下げる動きに転じ、輸出依存車種は5〜10%程度の急落もありうる。プレミア相場の付くランクル・アルファード等は、対前月比でいきなり数十万円〜100万円下落するケースも想定。確度3割超は決して低くなく、最重要警戒シナリオです。
シナリオC(上振れ):ホルムズ正常化+輸出フル稼働(確度20%)
外交的解決でホルムズ海峡が事実上の正常化に向かい、UAE向け輸出が短期間で再開する展開。滞留していた在庫が一気に流れ出し、輸出依存車種は反発相場が継続、5〜8月にかけて高値水準維持。ただしこのシナリオは、現時点の停戦不安定さと通航量95%減という現実を踏まえると、楽観的な見方になります。
まとめ:「下げ止まり」の安心感に騙されないこと
2026年5月の中古車市場は、表面的には「3月の急落から下げ止まった」ように見えます。月次は前月比-0.5%、4月後半には反発、前年同月比でも+8.9%と高水準。これだけ見れば「焦って売らなくていい」と判断する売り手が出てくるのも自然です。
しかし、その裏で進行しているホルムズ海峡封鎖の影響は、まだ国内中古車相場に十分織り込まれていないと当編集部は見ています。日本最大の輸出先であったUAE経由のフローが22万台規模(年間)で宙に浮き、代替先での吸収量との差し引きで月7,000台超の滞留が発生している計算です。これが買取査定額に反映されてくるのは、これからのステージです。
結論として:
- 輸出依存の高い車種(ランクル・アルファード・ハイエース・ハリアー等)に乗っている方:4月後半の反発相場が「下落前の最後の高値圏」になる可能性。様子を見続けるリスクが、これまでよりもはっきり大きい局面です
- 国内需要依存の車種(軽・コンパクト・5ナンバーミニバン)に乗っている方:ホルムズ要因の直接影響は受けにくいが、上昇材料も乏しい。決断を遅らせる経済合理性は薄い
- 共通:査定は無料・営業電話なしで取れるサービスがあるため、まず現状の値段を把握しておくことが最大の自衛策
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本レポートのデータ出典・編集方針
- USS業者間オークションデータ:USS東京の週次開催結果(2026年4月2日・9日・16日・23日開催分)を基に、当編集部にて月次平均を算出
- 輸出統計:財務省貿易統計(2026年3月確定値)の中古車輸出データを基に集計
- ホルムズ海峡関連の情報源:日本経済新聞「世界の中古車輸出、ホルムズ海峡封鎖で打撃」(2026年3月7日)、ジェトロ地域・分析レポート、時事通信「ホルムズ海峡貿易トラッカー」、ダイヤモンドオンライン他の公開報道
- 編集方針:当メディアは中古車買取・売却の意思決定支援を目的とし、業者間オークションの実勢データに基づく相場分析を毎月公開しています。広告主・買取業者からの個別の依頼により分析内容を変更することはありません
- 本号公開日:2026年5月10日
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